(第34回)理事長 神野吾郎 メッセージ


一般社団法人 中部経済連合会 副会長

◇開会にあたって

採択者の皆様にはノベーション創造の中心的な存在に

 本日は大変お忙しいなか、東海産業技術振興財団の第34回研究助成金交付決定伝達式にご出席いただきありがとうございます。また、今回選考に際しまして伊津野選考委員長はじめ、関係者の皆様に多大なるご尽力をいただき、感謝申し上げます。

 これまでの本会は、教室形式のレイアウトでかしこまった形で行っていましたが、これからは受賞された皆様にも新たな発見の場として色々と交流をしていただこうと、このような円卓形式での開催といたしました。少々戸惑いがあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 世界的な社会情勢は言うまでもありませんが、大変厳しい状況がございます。コロナや戦争と色々な意味で変化の激しい毎日ですが、そのような中で、新たな研究開発やビジネス創造が世界中の大きなトレンドになっており 非常に大きな社会課題を人類が乗り越えるために世界中の大学などの研究機関や企業が凌ぎを削っています。

 そういった意味で日本は大変残念ながら、「失われた30年」という言葉が表すように、世界が劇的に進化しているにも関わらず、ある意味で今までやってきたことを踏襲し続けてきたのが現在の結果ではないかと、私自身大変忸怩たる思いであります。

 客観的なデータとしては、かつてはトップレベルであったデジタル競争力が世界で28位であったり、90年代には30社ほどあった企業の時価総額の上位50社でも、今では1社のみとなり、大学においても世界ランキングトップ100位以内に以前5大学あったものが今では2大学となっており、ビジネスと学術の双方の領域において残念なことに世界との差が広がってきています。

 日本も成長戦略として、科学技術のイノベーションやデジタル田園都市構想を掲げ、地方の活性化やカーボンニュートラルの実現をテーマとして打ち出しているわけですが、そのような中において、改めて東京一極集中から 分散化によるリアリティの伴った地方の価値創造を推進しなければならないと、改めて思っております。

 東海地域はご承知のとおり、輸送・自動車産業をはじめとした様々な産業が集積しており、例えば東三河と静岡県の遠州地区を合わせただけでも製造品の出荷額が10兆円にのぼり、世界的にも非常にものづくりの一大集積地で、しかも先端的な工場や企業の拠点がある地域です。また一次産業においても、全国トップクラスの出荷額を誇る田原市やベスト10に入る浜松市をはじめとした、一大生産地域となっております。

 このような豊富な資源を生かしながら産学官が一体となって、戦略的にそれぞれの役割を組み立て直し、トライ&エラーを繰り返しながら新しい関係性をつくっていくとことで、新しい東海地区の姿が見えてくるのではないかと思います。

 本財団は まさに日本がピークにある1987年に設立をされました。これは豊橋技術科学大学が豊橋に立地をするということが大きな契機でしたが、これまで産学連携の中で450件の研究に8億円近い助成を行っており、ささやかかも知れませんが、東海地域の産業の発展、そして元気な、特に若い研究者の皆さんの研究推進に本財団も貢献はできたのではないかと、歴史を見て思っております。

 先ほどお話しましたように変化の激しい時代であり、新たに目標を決めて日本も頑張らないといけない中において、本財団も改めて時代のニーズをしっかりと捉えて変革をしながら、社会の課題が克服できるような研究開発の様々な応援をしていきます。

 今日の伝達式はコロナ禍により3年ぶりの開催となりますが、この期間に色々なことを考えて、今日のような形になりました。新たな出発の一つの機会にしたいと思います。

 最後になりますが、今回採択の研究者の皆さんが、ノベーション創造の中心的な存在になっていただくことを心から祈念して、私からのご挨拶とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いします。