(第34回)副理事長 榊 佳之 メッセージ


学校法人静岡雙葉学園 特別顧問

◇閉会にあたり採択者へのエール

科学技術の裾野を支える挑戦的な研究を

 

 この度は素晴らしい研究を提案されまして採択されましたこと、誠におめでとうございます。冒頭に神野理事長から日本の地位低下が心配というお話がございました。その通りだと思いますし、残念でもありますが、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた頃から時代は変わり、大学の世界ランキングでも残念な結果が見られます。

 私も豊橋技術科学大学の学長をはじめ大学での研究もしておりましたけれども、個人的な見解を申し上げると、日本は90年代以降、「選択と集中」という方針をとって、これは素晴らしいことではありましたが、これは基礎となるものがあってこそ、その先へ伸びるのですが、そのもととなる裾野をしっかり支えることを少し忘れかけていたのではないかと思います。

 大学では交付金が減って研究室の一般経費が削減されて先生方も非常に苦しい状況であり、選択と集中の一方で裾野をしっかり支えることを、やはりやらなければいけない。

 そういう意味で、この財団については巨額な研究費を持っている、あるいは取る大学というだけではなく、より一般的に頑張っていらっしゃる研究者の方々を応援するのも非常に大切なことだと思います。もちろん 最後は産業などにつながる必要があるわけですが、そういう意味において、研究育成型の研究助成は必ずしもすぐに結びつかないが、将来の目があるぞという観点での採択が非常に有意義であり、それが成長して先に進みそうだなという観点が一般発展型での採択だと思います。

 ただし、どういうものを裾野とするかということの選択は難しく、先ほど氏原先生から「マニアックでチャレンジング」という研究の紹介がありましたが、まさにそういった研究が本当は将来の選択と集中の大きな柱になっていく芽があるので、財団としてはそういった研究をしっかり支えたい。3年後には誰かがやりそうな研究を財団が支えるということはしたくないと思っております。そういう意味で皆様から本当にチャレンジングな提案が出されて、本当によかったなと思います。

 はやりここでそれぞれがしっかり評価をされて、次へ向かって進められるという形になったことは皆様方にとっても励みになると思いますし、我々も楽しみにして今後の発展を見たいと思っております。また特に東海地域は農業を含めて非常に産業の裾野が広い地域ですので、幅広い分野でそれぞれの先生方が、今回出されたユニークな提案を発展させて、この地域はもちろん、世界のいろいろな課題に向けて大きく伸ばしていってくださるということを期待したいと思います。

 今回、初めてこういう形で開催したのも非常に良かったと思いますし、先生方のプレゼンテーションがとても上手で感心しました。やはり他の人にわかってもらい「なるほど」と思わせる、技術とは言いませんが、そういうものを発することができる方は非常に説得力があると思いますので、今日は発表されなかった先生方も、自分の持っている その想いを人に伝えて、そこから次へつながっていくということをしていただきたいですし、今日の会がこれからの励みになることを祈念して私の挨拶といたします。
 本日は誠におめでとうございました。